M&Aの手法
事業譲渡の法務・手続き
以下の場合は、株主総会の特別決議が必要です。
- 事業の全部または重要な一部の譲渡
- 事業全部の賃貸、その経営の委任、他人と事業上の損益全部を共通にする契約、それに準ずる契約の締結、変更または解約
- ほかの会社の事業全部の譲り受け
ただし、簡易な事業の譲受け(※1)に該当する場合(簡易事業譲渡)や譲受会社が「特別支配会社(※2)」である場合(略式事業譲渡)は不要です。
- 重要な一部とは?
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- 簡易な事業譲受けでない場合
- その譲渡によって、会社企業全体の運命にどの程度影響があるか、すなわちその譲渡によって会社がその事業を維持できなくなるか、または少なくともその事業規模を大幅に縮小せざるを得なくなるかについて判断
譲渡会社は特段の定めがない限り、同一市町村および隣接市町村で事業譲渡の日から20年間同一の事業を営むことができません。(会社法21①)
ただし、当事者間で上記義務を負わないという契約を締結すれば、この限りではありません。また、当事者間の特約により、同府県および隣接府県内かつ30年を上限として競業避止義務の範囲を拡大することもできます。(会社法21②)
ただし、これよりも広範な特約を定めた場合はこれが無効になります。上記の限定範囲までが有効になります。
事業譲渡契約で、譲受会社が譲渡会社の有していた当該事業にかかる債務を引き受けないと定めたときは、譲受会社はその債務について弁済の責任を負いません。
しかし、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合(商号の続用)には、上記の特約をしても、譲受会社もその債務について弁済の責めを負うことになります。(会社法22①)
ただし、事業譲渡後遅延なく、譲受会社が譲渡会社の債務を負わない旨を登記するか、個別にその旨を通知すれば、弁済の責めを免れます。(会社法22②)
また、商号を続用しない場合であっても、譲受会社が事業によって生じた債務を引き受ける旨の広告(※3)をした場合には、その債務についての弁済の責任を負うことになります。(会社法23)
会社がある事業について新会社を設立する場合、まず新会社の成立を先行させ、その後、新会社に当該事業を事業譲渡する方法が考えられます。この方法による場合、譲受会社である新会社においては、当該譲受が事業全部の譲受けでなければ、原則として取締役会の決議で足ります。
しかし、新会社である譲受会社が設立後2年以内の場合で、その成立前より存在する財産で事業のため継続して使用すべきものを純資産額の5分1以上の対価による取得する場合には、事後設立の規制に服することになります。具体的には、譲受会社において、株主総会の特別決議が必要となります。
事業譲渡に反対する株主が、会社に対して、自己の保有する株式を公正な価格で買い取るべき旨請求できる権利のことをいいます。ただし、以下の株主に限られます。
- (a)事業譲渡承認のための株主総会に先立って会社に対し書面をもって事業譲渡に反対する意思を通知し
かつ
- (b)株主総会においてこれに反対した株主
原則的に、事前の届け出が必要です。
一定の取引分野における競争を実質的に制限することになる場合および不公正な取引方法に寄る物である場合は、他の会社の国内における事業の全部または重要部分の譲受をしてはならないと定められています。ただし、事業等の譲受けをしようとする会社及び事業等の譲渡をしようとする会社が同一の企業結合集団に属する場合は、届出が不要とされています。
実務上では、該当しそうな場合やグレーゾーンの場合は、事前相談をして、その段階で「重要な部分」にあたるか、実質的な審査を受け、指導が行われます。
- 事業等の譲受けの届出要件
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国内売上高合計額(※注1)が200億円を超える会社(譲受会社)が、
- (1)国内売上高が30億円を超える会社の事業の全部の譲受けをしようとする場合
- (2)他の会社の事業の重要部分(※注2)の譲受けをしようとする場合であって、当該譲受けの対象部分に係る国内売上高が30億円を超える場合
- (3)他の会社の事業上の固定資産の全部又は重要部分の譲受けをしようとする場合であって、当該譲受けの対象部分に係る国内売上高が30億円を超える場合
この場合には、公正取委員会が届出を受理した日から30日を経過する日までは、原則として事業等の譲受行為の実行が禁止されます。
(独禁法16③、10⑧)
ただし、公正取引委員会が必要と認めた場合、期間の短縮が可能です。
有価証券報告書を提出している会社が一定規模の会社分割を行い、重要事実となる場合、事前に臨時報告書を提出し、ディスクローズを求めています。
譲渡する側は、
- その事業の資産帳簿価額が純資産額の30%以上
- 譲渡することによる売上減少見込み額が売上実績の10%以上
が機関決定された場合が重要事実となります。
譲り受ける側は、
- 譲受けによる資産の増加額が純資産額の30%以上
- 譲り受けることによる売上増加見込み額が売上実績の10%以上
が機関決定された場合が重要事実となります。100%子会社から事業を譲り受ける場合は重要事実となりません。
事業を譲渡する場合 | 以下のいずれにも該当すること
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事業を譲受ける場合 |
次の(a)~(e)いずれにも該当
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対象資産の中に土地等(地上権等を含む)が含まれる場合で、かつ一定面積以上の土地等に該当する場合には、適正かつ合理的な土地利用の確保を図るため、国土法に基づく届出が必要とされている。
条件は平成26年12月末日現在のものですが、改正などで変わりますので、金融庁のホームページでご確認ください。
銀行・運送業など、その事業の性質上、監督官庁の行政指導を受ける業種の会社の分割については、その主務大臣の許可を要し、その許可がなければ効力が生じません。
- 銀行業
- ガス事業
- 電気事業
- 道路運送業
また、倉庫業(倉庫業法17②③)、電気通信事業(電気通信事業法17)などは、分割後、監督官庁に届出が必要になります。