M&Aの手法

事業譲渡の税務

事業譲渡そのものは「取引」ですから、株主に課税は発生しません。事業譲渡により他社へ譲渡した資産は、通常の資産の譲渡と同様に、各資産ごとに課税資産と非課税資産(土地、有価証券等)に分類して消費税の計算をしなければなりません。事業譲渡で譲渡の対象となる資産には、有形固定資産に留まらず顧客・人材・ノウハウ・営業権(のれん)など無形資産も含まれます。事業譲渡では、それらの資産の個別の譲渡として考えられる関係から、各譲渡資産の譲渡について消費税が課されます。但し、消費税法上非課税取引となる土地や有価証券等の譲渡等については除かれます。

売り手の税務
法人税等

譲渡益(=譲渡価額ー譲渡される資産の帳簿価額)が課税対象となります。なお、時価よりも低い価額による譲渡があった場合には、当該差額について寄附とみなされ、寄附金課税の適用を受けることになりますので注意が必要です。また、営業権(のれん)については、適正な方法で算出され、実際相場と乖離した過大な評価でない限り時価と判断されます。

消費税

譲渡される資産が課税資産であれば消費税が課されます。

資産内容
課税資産 有形固定資産(土地を除く)
無形固定資産
棚卸資産
営業権
ゴルフ会員権等
非課税資産 土地
有価証券
貸付金などの債権

なお、個々の資産について対価の額が明らかでなく、資産を一括して売買価額を決定している場合には、課税資産と非課税資産の時価で按分して計算します。なお、この場合の営業権は課税資産に含まれます。また、非課税資産の割合が多いと、譲渡会社の課税売上割合が95%未満(※)になる場合があるので注意してください。

※原則課税適用事業者が、課税売上げに係る消費税額から控除する仕入税額控除の計算方法は、その課税期間中の課税売上割合が95%以上であるか95%未満であるかによって大きく異なり、95%以上の場合には、その課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、その課税期間中の課税仕入れに係る消費税額の全額を控除できます。95%未満の場合には、課税仕入れに係る消費税額の全額ではなく、課税売上げに対応する部分のみが控除されます。

買い手の税務
消費税
支払消費税額を税額控除できます。
不動産に関する税金
譲受資産に不動産がある場合は、不動産取得税や登録免許税がかかります。
引き当て金の引き継ぎ
税法上、引当金の引き継ぎは認められていません。
営業権
事業の譲り受けで発生した営業権(のれん)は、5年以内に償却することとなります。

※本ページは2015年1月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。
また、概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。