M&Aの手法

新株引受の法務、手続き

  • 以下の募集株式発行に関する事項を定めます。
  • 全株式譲渡制限会社では、原則として、株主総会の特別決議で決定。(定款にて定足数の緩和可能)
  • 定款に取締役または取締役会の決議によって定める事ができる旨ある場合は、取締役または取締役会の決定
  • 公開会社では、有利発行でなければ、取締役会で決議可
    (定款をもって、株主総会決議事項とすることはできますが、通常は取締役会決議)
①募集株式の数・種類

定款で定めた発行可能株式総数の範囲内で。種類株式発行会社においては、株式の種類および種類ごとの数も決定

②募集株式の払込金額または算定方法

募集株式1株と引き換えに払い込む金銭または金銭以外の財産の額を決定。
明確に金額を定める事ができない場合は、その算定方法を定めます。

③現物出資をする旨、その内容、価額等

金銭以外の財産を出資の目的とする場合は、その旨を決め、それと同時に財産の内容と価額も決める必要があります。

④払込期日または払込期日

払込期日=募集株式と引き換えにする金銭につき、その日までに払込をなすべき日 
また、払込期間を定め、払込期間中に払い込みをした者は、払込の日から株主になるとする事も可

⑤増加する資本金・資本準備金に関する事項

株式の発行がされると、その払込金額および給付財産が資本金・資本準備金となるので、その増加する資本金・資本準備金に関する事項(増加しない場合もあり。)を決定

⑥株主に株式の割当を受ける権利を与える場合はその旨、申込期日など。

株主に株式割当を受ける権利を与える場合はその旨を決定。
その場合には、当該株主が割当を受ける募集株式の数と、引受けの申込期日も定めます。

  • 割当期日に株主名簿に記載または記録のある株主に対して株式の割当を受ける権利が与えられます。
  • 基準日を設定する場合は、株券発行会社は、名義買換未了の株主が割当期日までに名義買換をすることを促すために、権利の内容についての公告を行います。(会124)
  • 公告は、基準日の2週間前に行う必要があります。
  • 公告の内容は、一定に割当期日において、株主名簿に記載または記録のある株主が株式の割当を受ける権利を取得する旨。
  • なお、金融商品取引法に基づき、有価証券届出書の提出が要請される場合には、基準日の25日前までに提出しなければなりません。
  • 払込取扱場所である金融機関に対し、株式の申込取扱い、払込金の受け入れ・保管事務を委託します。
  • 通常は、銀行、信託会社が払込取り扱い場所に指定される事が多いですが、信用金庫、農業共同組合、労働金庫などを指定することもできます。
  • 募集事項、その株主が割当を受ける募集株式の数、申込期日などを株主に通知します。(会社法203①、202④)
  • 株式の払込に応じるかどうかは、各株主の判断に委ねられています。
  • 会社は、各株主に対し、その者が割当を受ける権利を有する株式の種類および数、一定の期日(申し込み期日)までに株式の申し込みをしないときには失権する旨もを、通知しなければなりません。(会社法202④)
  • この通知は、申込期日の2週間前に行うことが必要です。(会社法202④)
  • もっとも、この申込の催告から申込期日までの2週間という期間は、全株主の同意があれば短縮可。
  • ただし、短縮した場合には、募集株式発行に伴う変更登記申請にあたって、株主全員の同意書を添付する必要があります。(商登46①)
  • 会社が催告の通知をしたにもかかわらず、株主が申込期日までに株式の申し込みをしない場合には、株式の割当を受ける権利を失います。(会社法202④)
  • 会社は、株式の割当を受ける権利の譲渡を可能にするための措置をとることができます。
  • その方法は、会社は、基準日の公告または金融商品取引法に基づく開示をするにあたって、その旨を述べるというものです。
  • この場合、会社は株主に対して、新株予約権を無償で割り当てます。(会社法277)
  • 株主は、新株予約権を割当てられることによって、株式の割当を受ける権利を譲渡することが可能になります。
  • 証券発行新株予約権の場合は、証券を交付して譲渡し、それ以外の新株予約権は、振替制度の適用を受ける旨が定められない限り、譲渡の意思表示により譲渡の効力が発生します。
  • 後者の場合、新株予約権原簿の名義を書き換えることで、会社と第三者に対して、譲渡の効力を対抗することができるようになります。
  • 募集に応じて募集株式の引き受けの申し込みをしようとする者に対して、会社の商号、募集事項、取扱場所を通知しなければなりません。(会社法203②)
  • 株式を引き受ける株主は、申込期日までに、または申込期間内まで、引受けの申し込みを行います。
  • 株式の申し込みは、原則として、会社に書面を交付する方法でしなければなりません。(例外的に電磁的方法によることもできます。)
  • この書面には、申込をする者の氏名または名称、および住所、引受けようとする募集株式の数を記載します。(会社法203②)
  • 募集株式の割当を受ける権利を有する株主は、その有する株式の数に応じて株式の割当を受ける権利を有しています。(会社法202②)
  • 当該株主から適法な申し込みがされれば、会社は株式の割当をする義務があります。
  • なお、割当比率によって、1株に満たない端数が発生することがあります。この場合は、端株の単位に満たないは数については、割当を受ける事ができません。
  • 次記載の失権株と同様、会社は端数を切り捨てたまま各別の手当をしないで放置することもできますし、端数を1株にまとめて改めて引受人を募ることもできます。
  • 発行する会社自身に、新株の引受権を与える事は認められません。
  • 割当てる株式は、新株でもよいし、自己株式でもよいです。
  • 株式割当の権利を持っている株主が申し込み期日までに申し込みをしない場合は、その者は権利を失い、その株式は失権株となります。
  • 会社はそのまま失権株を放置してもよいですし、申し込み期日後に失権株につき改めて別の引受人を募ることもできます。
  • 新たに引き受け人を募るときはその部分は第三者割当増資となります。新株発行手続きと同様の発行条件の決議が必要になります。
  • 株式引受人は払込期日または払込期間中に、各株につきその発行価額の全額の払込をしなければなりません。(会社法208①)期間中に全額の払込をしない株式は失権します。
  • しかし、実務では、失権株を早期に確定するために、株式の申込時点で、払込取扱機関に発行価額と同額の申込証拠を払い込ませ、申込証拠金を添えることを行使の条件とする方法が採られます。
  • 申込証拠金は無利息とされ、株式払込金に振替、充当されます。
  • 株主は、払込につき相殺をもって会社に対抗することはできません。(会社法208③)
  • 払込義務を相殺によって処理することは、会社に対する債権を現物出資するのと同じ効果になります。
  • 株主と会社が合意の上で相殺処理することも許されないと解されています。
  • 払込期日を定めた場合はその期日に株主になります。払込期間を定めた場合は、出資の履行をした日に株主となります。(会社法209一、二)
  • 2週間以内に登記を行ってください。
  • 募集株式を引き受けた者は、変更登記の日から一年を経過した後は、錯誤を理由として募集株式の引受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは強迫または消費者契約法上の事由を理由として募集株式の引受けの取消しをすることができません。(会社法211②、消費者契約7②)
  • 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、会社に対し、募集に係る株式の発行をやめることを請求することができます。
  • 当該株式の発行が法令又は定款に違反する場合(発行可能株式数の超過。適法な機関決定をしていないなど)
  • 当該株式の発行が著しく不公正な方法により行われる場合(不均等な条件による株主割当、失権予告付申込催告のない株主割当など)
  • 差し止め請求は裁判外でも行うことはできますが、会社がそれに応じないときは、募集株式発行差し止めの訴えを提起しなければなりません。
  • しかし訴え請求前に発行の効力が生じてしまうと、訴えは却下されます。
  • そうならないように、株主は効力発生前に、会社を債務者として、募集株式発行さし止めの仮処分申請を行ってください。
  • 仮処分命令に違反して募集株式が発行された場合は、以下記載の募集株式発行無効の訴えの原因になると解されています。
  • 募集株式発行の無効は、募集株式発行の効力を生じた日から1年以内(公開会社では6ヶ月以内)に訴えをもって主張することができます。(会社法828①二)
  • 訴えを提起できるのは、株主、取締役または監査役、清算人、執行役に限られます。(会社法828②二)
  • 募集株式発行の無効事由は法定されておらず、解釈にゆだねられていますが、特に重大な法令・定款違反の場合に制限されると解されています。
  • そのため、不均衡な条件による株主割当などは、無効事由ではなく、取締役の損害賠償責任などで解決すべきと解されています。
  • 一般的に無効事由とされているもの:定款の定めにない種類の株式の発行、募集株式発行差止の仮処分命令違反、発行可能株式総数を超過する募集株式発行
  • 無効の判決が確定するまでに行われた株式による議決権行使や利益配当には影響を及ぼしません。
  • 判決が確定した場合は、会社は、募集株式の株主に対して払い込まれた金額の支払いをしなければなりません。
  • 以下の募集株式発行に関する事項を定めます。
  • 公開会社では、有利発行などでなければ、取締役会で決議可
    (定款をもって、株主総会決議事項とすることはできますが、通常は取締役会決議)
①募集株式の数・種類

定款で定めた発行可能株式総数の範囲内で。種類株式発行会社においては、株式の種類および種類ごとの数も決定

②募集株式の払込金額または算定方法

募集株式1株と引き換えに払い込む金銭または金銭以外の財産の額を決定。
(既存の株主の利益を害さないため,決定する払込金額は公正でなければならず,原則として,株式の時価を基準とする価額でなければなりません。)
明確に金額を定める事ができない場合は、その算定方法を定めれば足ります。(公正な価格の時)
有利発行の場合は、株主総会の特別決議が必要で、株主総会にて、必要な理由を説明しなければなりません(会社法199条3項,201条1項前段,199条2項,309条2項5号)。
失権株について、株主に対してのみ市場価格より安い金額を発行価額とすることは例外で認められています。

③現物出資をする旨、その内容、価額

金銭以外の財産を出資の目的とする場合は、その旨を決め、それと同時に財産の内容と価額も決める必要があります。

④払込期日または払込期日

払込期日=募集株式と引き換えにする金銭につき、その日までに払込をなすべき日 
また、払込期間を定め、払込期間中に払い込みをした者は、払込の日から株主になるとする事も可

⑤増加する資本金・資本準備金に関する事項

株式の発行がされると、その払込金額および給付財産が資本金・資本準備金となるので、その増加する資本金・資本準備金に関する事項(増加しない場合もあり。)を決定

⑥株主に株式の割当を受ける権利を与える場合はその旨、申込期日など。

株主に株式の割当を受ける権利を与える場合はその旨を決定。
その場合には、当該株主が割当を受ける募集株式の数と、引受けの申込期日も定めます。

  • 払込取扱場所である金融機関に対し、株式の申込取扱い、払込金の受け入れ・保管事務を委託します。
  • 通常は、銀行、信託会社が払込取り扱い場所に指定される事が多いですが、信用金庫、農業共同組合、労働金庫などを指定することもできます。
  • 取締役会決議で募集事項を定めたときは、既存株主に差止めの機会を与えるため,払込期日または払込期間の2週間前までに,募集事項を通知しなければなりません(会社法201条3項)。
  • この通知は公告をもって代えることができます(会社法201条4項)。
  • ただし金融商品取引法に基づく届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合(会社規則40条)には,この通知・公告は不要です(会社法201条5項)。
  • 公告または通知から払込期日までの2週間という機関は、全株主の同意があれば短縮できるとされています。
  • 短縮した場合には、募集株式発行に伴う変更登記申請書に、全株主の同意を添付しなければなりません。
  • なお、有利発行の場合は、株主総会の特別決議で、募集株式発行事項の詳細がわかるため、公告・通知は不要とされています。
  • 募集に応じて募集株式の引き受けの申し込みをしようとする者に対して、会社の商号、募集事項、取扱場所を通知しなければなりません。(会社法203②)
  • 株式を引き受ける株主は、申込期日までに、または申込期間内まで、引受けの申し込みを行います。
  • 株式の申し込みは、原則として、会社に書面を交付する方法でしなければなりません。
  • この書面には、申込をする者の氏名または名称、および住所、引受けようとする募集株式の数を記載し署名して申込みます。(会社法203②)
  • なお、株式申込書記載事項および払込取り扱い場所を記載または記録した証書または電磁的記録による契約をもって、新株の総数が引き受けられる場合には、株式申込書による申込は必要ありません。(会社法205条)
  • 募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受を行う契約を締結する場合には、申込者に対する通知等の手続きおよび割当決定の手続きは不要ですので、最初から引受者が確定しているケースの場合、手続きは簡略化できます。
  • 誰に割り当てるかは取締役の自由ですが、会社支配を巡る争いがあり、取締役が支配権維持のために自派のみに割当を行った場合には、著しく不公正な方法による募集株式発行として違法となる場合があります。
  • 申込の順序や申込株式数などによって拘束されませんが、実務では申込の時点で申込証拠金を払い込ませ、申込の順に割当をして発行予定数に達すれば申込の受付を中止するという方法がとられるのが普通ですので、現実には、申込の順序により割当がされることが多いです。
  • 株式を割り当てられた者は、払込期日または払込期間中に、各株につきその発行価額の全額の払込をしなければなりません。(会社法208①)期間中に払込をしない株式は失権します。
  • 払込は払込取り扱い場所に行います。
  • しかし、実務では、失権株を早期に確定するために、株式の申込時点で、払込取扱機関に発行価額と同額の申込証拠を払い込ませ、申込証拠金を添えることを行使の条件とする方法が採られます。
  • 申込証拠金は無利息とされ、株式払込金に振替、充当されます。
  • 株式引受人は、払込につき相殺をもって会社に対抗することはできません。(会社法208③)
  • 払込義務を相殺によって処理することは、会社に対する債権を現物出資するのと同じ効果になります。
  • 会社からの相殺や会社が合意の上で相殺処理することも許されないと解されています。
  • 払込期日を定めた場合は、当該払込日に履行した引受人は、その期日に株主になります。払込期間を定めた場合は、出資の履行をした日に株主となります。(会社法209一、二)
  • 2週間以内に変更登記を行ってください。
  • 募集株式を引き受けた者は、変更登記の日から一年を経過した後は、錯誤を理由として募集株式の引受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは強迫を理由として募集株式の引受けの取消しをすることができません。(会社法211②)
  • その株式について、株主の権利を行使したときも同様です。(会社法211②)
  • 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、会社に対し、募集に係る株式の発行をやめることを請求することができます。会社が損害を被ることは要件となっていません。
  • 当該株式の発行が法令又は定款に違反する場合(発行可能株式数の超過、定款に定められた株主の株式の割当を受ける権利を無視した第三者割当、適法な機関決定をしていない発行、株主総会の特別決議を経ない有利発行など)
  • 当該株式の発行が著しく不公正な方法により行われる場合(支配権を維持するための自派への割当、不当な目的を達成する手段としての募集株式発行など)
  • 差し止め請求は裁判外でも行うことはできますが、会社がそれに応じないときは、募集株式発行差し止めの訴えを提起しなければなりません。
  • しかし訴え請求前に発行の効力が生じてしまうと、訴えは却下されます。
  • そうならないように、効力発生前に、会社を債務者として、募集株式発行差止めの仮処分申請を行ってください。
  • 仮処分命令に違反して募集株式が発行された場合は、以下記載の募集株式発行無効の訴えの原因になると解されています。
  • 募集株式発行の無効は、募集株式発行の効力を生じた日から6ヶ月以内に訴えをもって主張することができます。(会社法828①二)
  • 訴えを提起できるのは、株主、取締役または監査役、清算人、執行役に限られます。(会社法828②二)
  • 募集株式発行の無効事由は法定されておらず、解釈にゆだねられていますが、特に重大な法令・定款違反の場合に制限されると解されています。
  • そのため、株主総会の特別決議を経ていない有利発行などは、無効事由ではなく、取締役の損害賠償責任などで解決すべきと解されています。
  • 一般的に無効事由とされているもの:定款の定めにない種類の株式の発行、募集株式発行差止の仮処分命令違反、発行可能株式総数を超過する募集株式発行、定款で株主に株式の割当を受ける権利が与えられてる場合に、その全部または大部分を無視してなされた発行などがあげられます。
  • 募集株式発行事由の公告を欠くことも、株主の募集株式発行差止請求の機会をうしなわせることになるので、無効事由になると解されています。
  • 無効の判決が確定するまでに行われた株式による議決権行使や利益配当には影響を及ぼしません。
  • 判決が確定した場合は、会社は、募集株式の株主に対して払い込まれた金額の支払いをしなければなりません。
  • 以下の募集株式発行に関する事項を定めます。
  • 全株式譲渡制限会社では、原則として、株主総会の特別決議で決定。(会社法199条②、309②五)
  • 株主総会決議によって、取締役(取締役設置会社の場合は取締役会)に委任する場合は、取締役または取締役会の決議で決定。
①募集株式の数・種類

定款で定めた発行可能株式総数の範囲内で。種類株式発行会社においては、株式の種類および種類ごとの数も決定

②募集株式の払込金額または算定方法

募集株式1株と引き換えに払い込む金銭または金銭以外の財産の額を決定。
(既存の株主の利益を害さないため,決定する払込金額は公正でなければなりません。)
有利発行の場合は、株主総会の特別決議が必要で、株主総会にて、必要な理由を説明しなければなりません(会社法199条3項,201条1項前段,199条2項,309条2項5号)。
失権株について、株主に対してのみ市場価格より安い金額を発行価額とすることは例外で認められています。

③現物出資をする旨、その内容、価額等

金銭以外の財産を出資の目的とする場合は、その旨を決め、それと同時に財産の内容と価額も決める必要あり。

④払込期日または払込期日

払込期日=募集株式と引き換えにする金銭につき、その日までに払込をなすべき日 
また、払込期間を定め、払込期間中に払い込みをした者は、払込の日から株主になるとする事も可

⑤増加する資本金・資本準備金に関する事項

株式の発行がされると、その払込金額および給付財産が資本金・資本準備金となるので、その増加する資本金・資本準備金に関する事項(増加しない場合もあり。)を決定

⑥株主に株式の割当を受ける権利を与える場合はその旨、申込期日など。

株主に株式割当を受ける権利を与える場合はその旨を決定。
その場合には、当該株主が割当を受ける募集株式の数と、引受けの申込期日も定めます。

  • 募集株式の発行に関する事項について、株主総会の特別決議により、取締役会または取締役に委任をすることができます。
  • この場合、株主総会の決議では、取締役または取締役が当該委任に基づいて決定することのできる募集株式の種類および数の上限および払込価額の加減を定めなければなりません。
  • この特別決議は、決議の火から1年以内に払込をなすべき募集株式についてのみ効力を有します。(会社法200③)
  • 払込取扱場所である金融機関に対し、株式の申込取扱い、払込金の受け入れ・保管事務を委託します。
  • 募集に応じて募集株式の引き受けの申し込みをしようとする者に対して、会社の商号、募集事項、取扱場所を通知しなければなりません。(会社法203②)
  • 株式を引き受ける株主は、申込期日までに、または申込期間内まで、引受けの申し込みを行います。
  • 株式の申し込みは、原則として、会社に書面を交付する方法でしなければなりません。(例外的に電磁的方法によることもできます。)
  • この書面には、申込をする者の氏名または名称、および住所、引受けようとする募集株式の数を記載し、署名して申し込みます。(会社法203②)
  • また、募集株式を引き受けようとする者により、その総数が引き受けられる場合は、株主申込書による申込は必要ありません。(会社法205条)
  • 募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受を行う契約を締結する場合には、申込者に対する通知等の手続きおよび割当決定の手続きは不要ですので、最初から引受者が確定しているケースの場合、手続きは簡略化できます。
  • 誰に割り当てるかは取締役の自由ですが、会社支配を巡る争いがあり、取締役が支配権維持のために自派のみに割当を行った場合には、著しく不公正な方法による募集株式発行として違法となる場合があります。
  • 申込の順序や申込株式数などによって拘束されませんが、実務では申込の時点で申込証拠金を払い込ませ、申込の順に割当をして発行予定数に達すれば申込の受付を中止するという方法がとられるのが普通ですので、現実には、申込の順序により割当がされることが多いです。
  • 株式を割り当てられた者は、払込期日または払込期間中に、各株につきその発行価額の全額の払込をしなければなりません。(会社法208①)期間中に払込をしない株式は失権します。
  • 払込は払込取り扱い場所に行います。
  • しかし、実務では、失権株を早期に確定するために、株式の申込時点で、払込取扱機関に発行価額と同額の申込証拠を払い込ませ、申込証拠金を添えることを行使の条件とする方法が採られます。
  • 申込証拠金は無利息とされ、株式払込金に振替、充当されます。
  • 株式引受人は、払込につき相殺をもって会社に対抗することはできません。(会社法208③)
  • 払込義務を相殺によって処理することは、会社に対する債権を現物出資するのと同じ効果になります。
  • 会社からの相殺や会社が合意の上で相殺処理することも許されないと解されています。
  • 払込期日を定めた場合は、当該払込日に履行した引受人は、その期日に株主になります。
    払込期間を定めた場合は、出資の履行をした日に株主となります。(会社法209一、二)
  • 2週間以内に変更登記を行ってください。
  • 募集株式を引き受けた者は、変更登記の日から一年を経過した後は、錯誤を理由として募集株式の引受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは強迫を理由として募集株式の引受けの取消しをすることができません。
    (会社法211②)
  • その株式について、株主の権利を行使したときも同様です。(会社法211②)
  • 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、会社に対し、募集に係る株式の発行をやめることを請求することができます。会社が損害を被ることは要件となっていません。
  • 当該株式の発行が法令又は定款に違反する場合(発行可能株式数の超過、定款に定められた株主の株式の割当を受ける権利を無視した第三者割当、適法な機関決定をしていない発行、株主総会の特別決議を経ない有利発行など)
  • 当該株式の発行が著しく不公正な方法により行われる場合(不当な目的を達成する手段としての募集株式発行など)
  • 差し止め請求は裁判外でも行うことはできますが、会社がそれに応じないときは、募集株式発行差し止めの訴えを提起しなければなりません。
  • しかし訴え請求前に発行の効力が生じてしまうと、訴えは却下されます。
  • そうならないように、効力発生前に、会社を債務者として、募集株式発行差止めの仮処分申請を行ってください。
  • 仮処分命令に違反して募集株式が発行された場合は、以下記載の募集株式発行無効の訴えの原因になると解されています。
  • 募集株式発行の無効は、募集株式発行の効力を生じた日から1年以内に訴えをもって主張することができます。(会社法828①二)
  • 訴えを提起できるのは、株主、取締役または監査役、清算人、執行役に限られます。(会社法828②二)
  • 募集株式発行の無効事由は法定されておらず、解釈にゆだねられていますが、特に重大な法令・定款違反の場合に制限されると解されています。
  • そのため、株主総会の特別決議を経ていない有利発行などは、無効事由ではなく、取締役の損害賠償責任などで解決すべきと解されています。
  • 一般的に無効事由とされているもの:定款の定めにない種類の株式の発行、募集株式発行差止の仮処分命令違反、発行可能株式総数を超過する募集株式発行、定款で株主に株式の割当を受ける権利が与えられてる場合に、その全部または大部分を無視してなされた発行などがあげられます。
  • 募集株式発行事由の公告を欠くことも、株主の募集株式発行差止請求の機会をうしなわせることになるので、無効事由になると解されています。
  • 無効の判決が確定するまでに行われた株式による議決権行使や利益配当には影響を及ぼしません。
  • 判決が確定した場合は、会社は、募集株式の株主に対して払い込まれた金額の支払いをしなければなりません。
株主割当他社の例
平成25年8月26日
東証2部 セブンシーズホールディングス(株)
株主割当による新株式発行
平成25年8月26日 取締役会決議
平成25年8月26日 有価証券届出書提出
平成25年9月中旬 基準日設定公告
平成25年9月11日 有価証券届出書効力発生日
平成25年10月11日 権利落日
平成25年10月11日 発行日決済取引売買開始日
平成25年10月16日 割当基準日
平成25年11月20日 割当通知発送
平成25年11月25日~
平成25年12月6日
申込期間
平成25年12月13日 発行新株式数確定
平成25年12月18日 発行日決済取引売買最終日
平成25年12月20日 払込期日
平成25年12月20日 新株式効力発生日
平成25年12月24日 発行日決済取引決済日
第三者割当(公開会社)他社の例
平成26年12月11日
TOKYO PRO Market (株) イー・カムトゥルー
第三者割当による新株発行
平成26年10月20日 東京証券取引所 TOKYO PRO
Market に上場
平成26年12月11日 取締役会決議
平成26年12月22日~
平成26年12月25日
申込期間
平成26年12月26日 払込期日

新株引受の法律手続きのその他のポイント

発行可能株式総数の変更

株式は、発行可能株式総数を超えて発行することはできません。そこで、発行可能株式総数を超えて、新株を発行したい場合には、発行可能株式総数を増加する必要があります。発行可能株式総数は定款記載事項ですので、発行可能株式総数増加のためには、株主総会の特別決議を経る必要があります。
発行可能株式総数は、設立時発行株式の総数の4倍を超えて増加することができないのが原則ですが(会社法37③)、全株式譲渡制限会社においては、この制限はなく(会社法37ただし書き)自由に増加させることができます。

公開会社の場合の発行価格の決定

市場価格のある株式の場合、市場の需給関係によって株価は変動するため、取締役会において定めた払込金額よりも払込期日における株価が下回ってしまう可能性があります。万が一、株価が下がった場合、新株の引受人がその時の時価よりも上回る払込金額では、払込を行わなくなってしまいますので、払込金額の設定には一定のアローワンスが許容されます。
取締役会において決定する時点の市場価格から3%程度割り引いた価格を払込金額とすることが実務上多く行われています。
「公正な価格」で発行する場合は、取締役会において具体的な価額ではなく、「算定の方法」を定めればよいとされています。
「算定の方法」としては、具体的には、主幹事証券会社が発行会社の事業内容、株価動向、機関投資家等へのヒアリングなどをもとに、総合的に発行価額を決める「ブック・ビルディング方式」が実務上多く用いられています。

譲渡制限会社の場合の発行価格の決定

市場価格のない株式を発行する場合は、一定の根拠に基づいた価額の算定の根拠が必要となります。これは税務上も重要な問題になりますので、注意が必要です。

有利発行

第三者割当増資又は新株予約権 (ストックオプション) の付与の際、社会通念上妥当と考えられる価格以下 (無償による付与を含む) で行われる場合、この行為を有利発行といいます。妥当な価格との乖離幅10%が目安となります。有利発行が行われると他の株主の持分は希薄化するため、特別決議が要件となります。

※本ページは2015年1月1日現在の法令等に基づいて作成されており、これ以降の税制改正等が反映されていない場合がありますのでご留意ください。
また、概略的な内容を紹介する目的で作成されたもので、プロフェッショナルとしてのアドバイスは含まれていません。個別にプロフェッショナルからのアドバイスを受けることなく、本解説の情報を基に判断し行動されないようお願いします。